ペット法学会2007年シンポジウム 報告内容

 
            獣医療と法 日本の法状況(1) 

 

第10回 ペット法学会 学術大会

獣医療と法 日本の法状況(1)

                     平成19年11月17日

                                  弁護士 渋 谷   寛

 

第1 獣医師制度(獣医師法)

   明治18年(1885年)8月 太政官布告 獣医免許規則

   明治23年(1890年)8月 法律第76号 獣医免許規則

   大正15年(1926年)4月 法律第53号 獣医師法制定

   昭和24年(1949年)6月 法律第186号 獣医師法改正

   平成4年(1992年)5月 法律第45号 獣医師法改正(最終改正平成19年6月27日法律第96号)

 

第2 獣医師の法的義務

1 獣医師法

  ア 応招義務(19条1項)

  イ 診断書・出生証明書・死産証明書及び検案書の交付義務(同条2項:29条20万円以下罰金)

  ウ 無診察での診断書等の交付禁止(18条:29条20万円以下罰金)

  エ 診療簿及び検案書記載義務(21条1項:29条20万円以下罰金(虚偽記載含))

  オ 診療簿及び検案書3年間保存義務(同条2項:29条20万円以下罰金)

  カ 行政の職員からの検査に応じる義務(同条3項:29条20万円以下罰金)

  キ 農林水産大臣への氏名・住所等の届出義務(22条)   

2 獣医療法(平成4年法律第46号、第1条(目的)この法律は、飼育動物の診療施設の開設及び管理に関し必要な事項並びに獣医療を提供する体制の整備のために必要な事項を定めること等により、適切な獣医療の確保を図ることを目的とする。」)

  診療施設を開設した場合の届出義務(3条:21条20万円以下罰金)

3 狂犬病予防法(昭和25年法律第247号)

同法の届出義務(8条:同条1項について26条2項30万円以下罰金)

4 家畜伝染病予防法(昭和26年法律第166号)

同法の届出義務(4条、4条の2:同条3項若しくは5項について65条2項30万円以下罰金、13条:1項について63条1項3年以下懲役又100万円以下罰金)

5 民法などの契約責任(診療・治療や報告義務等)

第3 獣医師の責任

1 刑事 

@     刑法 器物損壊罪(261条:3年以下懲役又30万円以下罰金) 虚偽公文書作成罪(156条:1〜10年以下懲役)詐欺罪(246条:10年以下懲役) 業務上横領罪(253条:10年以下懲役)

A     動物愛護管理法 動物虐待罪(44条1項(殺傷):1年以下懲役又100万円以下罰金、2項(衰弱)及び3項(遺棄):50万円以下罰金)

B     その他、獣医師法、獣医療法、狂犬病予防法、家畜伝染病予防法等の罰則規定

2 民事 

不法行為(709条)、動物占有者の責任(718条)、使用者責任(715条)共同不法行為(719条)や債務不履行(415条)、但し金銭賠償の原則(722条1項・417条)

3 行政(農林水産大臣) 免許の取り消し及び業務の停止(獣医師法8条:28条1年以下懲役若しくは50万円以下罰金又は併科)

@       正当な理由なく診療を拒否したとき(同法19条1項違反)

A       氏名・住所などの届出をしなかったとき(同法22条違反)

B       (5条1項1乃至4号)のいずれかに該当するとき

ア 心身の障害により業務が適正にできない者

イ 麻薬、大麻又はあへんの中毒者

ウ 罰金以上の刑に処せられた者

エ 獣医師道に対する重大な違背行為若しくは獣医事に関する不正行為があった者又は著しく徳性を欠くことが明らかな者

4 その他の社会的・道義的責任

 

第4 獣医療契約

1 法的性質

医療行為については準委任契約(民法656条)と考えるのが通説。そのほか請負契約や賃貸借契約の性質を有することも考えられる。 

2 準委任契約としての義務

@     委任の本旨に従った善管注意義務(民法644条) 獣医療水準の問題(地域、施設、人員及び緊急性がどう影響するか)

A     報告義務 飼い主から請求があるときは何時でも、委任終了後遅滞なく顛末を報告する義務がある(民法645条)

 

第5 獣医療過誤訴訟の現状

1 判例集に掲載されたものを調べても、数は少ない。ところが、ここ数年、獣医療過誤の裁判は増えている傾向にあるといえる。多摩地区の動物病院の集団訴訟など数多くの事件が裁判中である。

2 獣医療過誤訴訟の最近(5年ほど)の展開

@ 宇都宮地方裁判所の平成14年3月28日判決では、避妊手術に際しての医療過誤を認めた上で、物的損害50万円、慰謝料20万円、弁護士費用20万円、治療費等合計32、500円の損害賠償を認めた。控訴審で和解が成立した。

A     東京地方裁判所平成16年5月10日判決(真依子ちゃん事件)では、糖尿病の治療が遅れたため死亡したとして、原告2人に対し慰謝料60万円を含む総額81万円の支払いが命じられた。これまで人間の医療事件だけを扱ってきた医療集中部で、初めての獣医療裁判となった。比較的高額な賠償責任を認めた裁判としてテレビや新聞で報道された。

B     名古屋高等裁判所平成17年5月30日判決(上告後棄却確定)では、説明義務違反を認め2人合わせて30万円の慰謝料を認めた。

C     横浜地方裁判所平成18年6月15日判決では、高次の医療機関への転院が1週間遅れたために病状が悪化したとして、慰謝料20万円を認めた。重度の障害が残った事案。

D     仙台地方裁判所平成18年9月27日判決(すみれちゃん事件)では、飼い主側勝訴(詳細不明)。

E     浜松簡易裁判所平成18年11月22日判決では、飼猫の最後を看取りたいとの要望に応える診療契約上の注意義務に反したとして、慰謝料3万円を認めたものがある。

F     東京地方裁判所平成19年3月22日判決(控訴中)では、飼い主たちが起こした5件の集団訴訟で、獣医師に動物傷害・詐欺的行為があったとして、140万円の慰謝料を含む316万円の支払いを命じた。

G     東京地方裁判所平成19年9月26日判決では、難病にかかっていた猫が診察中死亡した事案で、慰謝料18万円を含む22万円の支払いを命じた。

H     東京高等裁判所平成19年9月26日判決では、停留精巣(睾丸)の取り残しがあったとして、慰謝料50万円を含む130万円の支払いを命じた東京地方裁判所平成18年9月5日判決の控訴を棄却した。

I     東京高等裁判所平成19年9月27日判決では、飼犬に腫瘍があると診断し、下あご切除や乳腺摘出など3ヶ所の手術を同時に行ない翌月に死亡した事案で、約140万円の損害賠償を命じた。 

3 獣医療裁判の特殊性

@     複雑な事案であるため簡易裁判所ではなく、多くは地方裁判所へ訴えを提起している。医療集中部で扱う事案が増えている。多くの飼い主は受任してくれる弁護士を探すのに苦労し、更に訴訟費用及び弁護士費用の工面が必要となる。

A     知る限りでは、飼い主側が敗訴することは少ない。

もっとも、獣医師のほうから飼い主に対して、債務不存在確認訴訟を提起し、医療過誤は存在しないとされ、獣医師が勝訴した事例がある(東京地方裁判所平成3年11月28日判決、判例タイムズ787号211頁)。

B     証人尋問が終わっても裁判官が心証を取れない場合、鑑定が必要となることがある。鑑定をしてくれる専門家(獣医学部の教授など)を探すことにも大変苦労する。

C     損害賠償は金銭賠償が原則(全ての損害を金銭に評価しなおす)。

  ア 財産的損害 @ ペットの時価・交換価値の算定が難しい。取得価格を基準に減価償却する方法、同じペットを購入する場合の価額などを参考として決める。有名なペットショーのチャンピオン経験のあるペットなど特殊なペットを除き成長したペットの交換価値はとても低いしないこともある。A 逸失利益 交配料(チャンピオン経験の有無などが考慮される)・CM出演料などの得べかりし利益 B 治療費 当該医院(無駄になった部分について) 他医院(特に必要性のない後院の分) C 交通費(動物病院への通院やお見舞い)D 葬儀費用(最も古い事案は獣医療過誤の事案ではないがいわゆるイヌ・ネコ裁判東京地方裁判所・昭和36年2月1日判決・判例時報248号15頁・判例タイムズ115号91頁で埋葬料600円が認められている。獣医療裁判の多くで全額若しくは一部が損害として認められている) E 弁護士費用 認容額の約1割を被告に負担させている。

イ 精神的損害 F慰謝料(獣医療過誤の判例上昭和43年から認められている。) 

 

第6 獣医療過誤訴訟における飼い主の慰謝料について

1 ペットは「物」とは同じではない

民法上、ペットは「物」に分類される。物の損害の場合の慰謝料に関しては、その交換価値が賠償された場合には、そのことで精神的苦痛に対しても慰謝されたものとみなされ慰謝料を賠償する必要はないとされている。しかし、物的損害の賠償だけでは精神的苦痛が癒されない特殊な場合には慰謝料が認められる。

ペットの死傷の場合、交換価値として算出された額が低額であることが多く、その額の賠償だけでは精神的苦痛が癒されたとみなすことが難しいこと、飼い主が生き物であり意思疎通のできるペットに対し家族同様の愛情をかけてきたペットの死傷の場合大きな精神的苦痛を被ることなどの理由から慰謝料が認められるのが一般である。少なくとも昭和30年代より判例でも慰謝料の支払いを認めている。

2 裁判例

@     慰謝料の支払が認められた判例

(1) 死亡に至らない場合 

横浜地方裁判所・平成18年6月15日判決(控訴中)で20万円の慰謝料が認められた。

(2)     死亡に至った場合 

ア 東京地方裁判所昭和43年5月13日判決(判例タイムズ226号164頁、判例時報528号58頁)では、財産的損害及び飼い主の慰謝料として5万円の損害賠償を認めた。

イ 宇都宮地方裁判所平成14年3月28日判決(猫のミューズちゃん事件、公刊物未搭載)では、20万円を認めた。

ウ 東京地方裁判所平成16年5月10日判決(日本犬スピッツの真依子ちゃん事件、判例タイムズ1156号110頁、判例時報1889号65頁、私法判例リマークス32号52頁長谷川先生解説)では、夫婦の合計で60万円を認めた。

エ 名古屋高等裁判所平成17年5月30日判決(判例タイムズ1217号294頁)では、死亡との因果関係はなく説明義務違反だけの事例であるが、2人合わせて30万円を認めた。

オ 浜松簡易裁判所平成18年11月22日判決では、飼い主が飼っていた猫の最後を看取りたいとの要望に応える診療契約上の注意義務に反したとして、慰謝料3万円を認めた。

カ 東京地方裁判所平成19年322日判決(控訴中)では、飼い主たちが起こした5件の集団訴訟で、獣医師に動物傷害・詐欺的行為があったとして、4件の合計で140万円の慰謝料を認めた。

キ 東京地方裁判所平成19年9月26日判決では、難病にかかっていた猫が診察中死亡した事案で、18万円(原告3人)を認めた。

ク 東京高等裁判所平成19年9月26日判決では、停留精巣(睾丸)の取り残しがあったとして、慰謝料50万円(原告は1人)を認めた東京地方裁判所平成18年9月5日判決の控訴を棄却した。

A     医療過誤を認めつつ、飼い主の慰謝料が否定された判例

大阪地方裁判所・平成9年1月13日判決(判例タイムズ942号148頁、判例時報1606号65頁)では、医療過誤を前提に財産的損害胎児2匹分を含む3匹分で70万円、弁護費用10万円を認めつつも、飼い主の慰謝料については愛玩用ではなく商品用飼育であることを理由に否定した。

B ペット自身の精神的苦痛に対する慰謝料は日本では未だ認められていない。アメリカでこれを認めたとする新聞報道もあるが、詳細は不明。ペット自体の慰謝料を認めるには、権利主体性の大きな問題があり、信託法の受益者論やペットの法人化論(フランスでの議論)などの法理論の発展が必要である。

 

第7 医療過誤裁判の具体的事例 「真依子ちゃん事件」

  平成16年5月10日 東京地方裁判所(平成15年()第16710号 損害賠償請求事件)民事30部(医療集中部)判決(判例タイムズ1156号110頁、判例時報1889号65頁、私法判例リマークス32号52頁長谷川先生解説)

1 事案の概要

  飼い主である原告らは,原告らが真依子と名付けて飼っていた日本スピッツ犬(平成5年1月3日生まれ、以下「本件患犬」という。)が,被告Aの開設するD獣医科病院で平成14年12月28日より糖尿病治療を受けたが,同病院の獣医師らが,インスリンの投与を怠ったために平成15年1月3日に死亡したとして,本件患犬の治療を担当した獣医師である被告らに対し,被告Aに対しては不法行為又は診療契約の債務不履行に基づいて,被告B及び被告Cに対しては不法行為に基づいて,損害賠償金の支払を求めた。

熱海への家族旅行中に念のためと思い獣医師に診察してもらい、糖尿病と診断され、旅行を取りやめ帰宅しかかりつけのD獣医科病院に適切な治療を求めた。食事療法をすることになったが、たびたび嘔吐し、翌日12月29日に入院。その後も経口薬のオイグルコンを投与されたのみで、インスリンの投与はなされなかった。主治医として慕われていた被告Aは年始の休みで海外へ行く。様態がよくならないまま飼い主の不安が増大し、翌平成16年1月2日に後院へ転院しインスリン投与等の治療を受けたが甲斐なく翌3日に死亡した。飼い主は愛犬の10歳の誕生日を死で迎えた。

2 請求

  相手方(被告) 医院長他担当獣医師2名合計3名

  内容(総額約440万円 但し、夫婦2人で共有なので半額ずつ請求)

   逸失利益 30万円

   治療費  約13万円(被告医院 約7万円 後医院 約6万円

   葬儀費用 約5万円

   慰謝料 350万円(子供を交通事故で亡くした場合の慰謝料2000万円を基準に、平均寿命で比例計算した。平均寿命は人間80歳、犬15歳とした。)

   弁護士費用 約40万円  

  法的性質 3人に対し不法行為責任、医院長に対しては債務不履行責任も。

3 判決文に現れた争点と裁判所の判断

(1)被告らが本件患犬にインスリンを投与しなかったことに注意義務違反があるか

@ 被告らの注意義務について

「遅くとも30日の診療開始時の段階で行うべきインスリンの投与をしなかった過失がある」

A 因果関係について

後院での「インスリンの投与等によって、一時的な状態の改善がみられたのであるから、遅くとも平成14年12月30日の診療開始時に本件患犬に対するインスリン投与が開始され、糖尿病・糖尿病性ケトアシドーシスに対する積極的かつきめ細かな治療が開始されていれば、その後継続的なインスリンの投与は必要になるが、少なくとも糖尿病性ケトアシドーシスの急速な進行による本件患犬の死亡は避けられたものと認められる」

 B 被告らの任について

医院長を含む2名の獣医師に対しては共同不法行為の成立を認めた。

しかし、1月2日のみ担当した獣医師については、自らの判断で直ちにインスリンを投与しなかったことに過失があるとまでは認められない、仮に同日のもう少し早い時点でインスリンを投与していたとしても、本件患犬の死亡という結果は避けられなかった可能性が高いものと認められる、として不法行為責任を否定した。

4 原告らの損害及び損害額について

@     逸失利益 なし

「原告らは本件患犬を子供のように思って育ててきたものであり,本件患犬を売却したり繁殖させたりする意思はなかったことは明らかであるから,本件患犬の交換価値を算定することは困難である(原告らは,本件患犬の取得価格等の主張はしておらず,交換価値を損害とすることは,原告らの求めるところでもないと解される。)」

A 治療費 約9万円

被告医院分は、必要がなかったものもあるが、全く必要がなかったともいえないので、半分の約4万円、後院分は全額

A     葬儀費用 1万円(死体の埋葬に一定の費用がかかるのでその一部)

B     慰謝料 60万円

ア 「犬をはじめとする動物は,生命を持たない動産とは異なり,個性を有し,自らの意思によって行動するという特徴があり,飼い主とのコミュニケーションを通じて飼い主にとってかけがえのない存在になることがある。」ペットの飼主特有の感情への配慮

 イ その他の判決文に現れた慰謝料の算定要因

「結婚10周年を機に本件患犬を飼い始め」「高松への転勤の際に居住した社宅では,犬の飼育が禁止されているところを会社側の特別の許可を得て本件患犬を飼育した」「東京への転勤の際には本件患犬の飼育環境を考えて自宅マンションを購入し」「本件患犬の成長を毎日記録する」「約10年にわたって本件患犬を自らの子供のように可愛がっていた」「原告らの生活において,本件患犬はかけがえのないものとなっていた」「以前に飼育していた犬が病死したことから,本件患犬を老衰で看取るべく(スピッツ犬の寿命は約15年である。),定期的に健康診断を受けさせるなどしてきた」「本件以降,原告Bがパニック障害を発症し,治療中である」「血統書付きの犬」「多数の表彰等を受けたことがあり」「平成9年10月5日には日本スピッツ協会から種犬認定を受け」たことが考慮された。

5 判決主文(抜粋) 「被告ら(獣医師2名)は、連帯して原告それぞれに対し(夫婦それぞれに対し半額ずつ)、総額約81万円を支払え」

6 判決の意義

獣医療訴訟としては、初めて医療集中部で判断された事例。訴え提起が平成15年7月であり、約10ヶ月間のスピード判決である(集中証拠調べ1回、被告2名と原告のうち夫、証人として後院で担当した獣医師が尋問された。和解期日の指定・鑑定申請なし。ちなみに、宇都宮地裁の判例の場合は4年ほどかかっている)。判決直後に記者会見を行い新聞・テレビなどで報じられた。飼い主の慰謝料としては、宇都宮地方裁判所の判例が当時の最高で20万円であったが、3倍にあたる60万円という高額な慰謝料が認められた。

 

第8 獣医療過誤訴訟の今後

    この5年で獣医療過誤裁判が増加したことは明らかといえるであろう。受任する弁護士が増えてきたこと、また、これまで泣き寝入りをしてきた飼い主たちが、他の裁判例に刺激されひるまなくなったことも要因としてあげられるであろう。今後しばらく、裁判は増加するものと考えられる。

    他方で、民事裁判に対する飼い主の不信も生じているのではだろうか。獣医療行為という高度に専門的な分野であり、また、飼い主側に味方し証言台に立つなど積極的に協力してくれる他の獣医師が極めて少ないことから、医療ミスであることを立証することが構造的に難しいのである。更に、やっとの思いで勝訴しても、一件あたり100万円前後の賠償額しか認められず、収入の高い動物病院にとっては大きな痛手とはならない。ましてや、民事事件で敗訴した獣医師が、免許を取り消されたり業務の停止を命じられた事例は未だ1件もないのである。飼い主の不満は残ったままである。

    今後は、獣医師自身が、獣医療を研鑽し過誤を防ぎ、診療に際して飼い主に対する十分な説明を行うことの他に、仲間内でかばいあうことなく、悪徳な獣医師を許さないとの毅然とした態度で獣医師自治を発展させ、民事裁判に対しても前向きに協力し取り組んで行く姿勢が必要となるのではなかろうか。                                             以上