アイルランドは1920年代に英国から独立したものの、長いこと英国に属していたので英国法制度の影響を強く受けています(因みに子孫はケルト民族でスコットランドと共通します)。
 アイルランド伝統民俗音楽が盛んな街として有名な、逆にそれ以外ではほとんど無名な街エニス(クレア州)の裁判所を尋ねました。アイルランドの西の玄関と呼ばれるアイリッシュコーヒーの発祥地として有名なシャノン空港より少し北西に位置しています。この街は日本のガイドブックに載っていないことがあるほどの小さな街なのですが、中世の修道院跡も在る歴史を感じさせる街で、立派な裁判所庁舎がありました。

 

前庭にてまずは銅像が迎えてくれました。帰国後アイルランド人に尋ねてわかったのですが独立直後から長いこと首相となり活躍した有名な政治家(ダバレラ)だそうです。三権分立の発想からすると、なぜ政治家が裁判所に祭られているのか良くわかりません。

橋を渡り街の中心部から約10分ほど歩いたところにあるその建物は予想外に大きく大英博物館に似たローマ風建築様式をしていました。
 
 
 
対照的に裁判所の玄関脇で手すりに寄りかかりうつむき考え込む弁護士がいました。きっと訴訟 進行の作戦を練っているのでしょうが、考え込むポーズも様になっています。
 
 
裁判所の崇高な屋根を見上げていると(バリスターかソリシターかどちらかわかりませんが)一人の弁護士が通りかかりました。一枚写真をとらせて欲しいと頼むと、快くポーズをとってくれました。生き生きとした表情と取材に答える余裕から、訴訟の進行がうまく行っていることを連想させます。
 
 
 
 
 
玄関から中に入ると階段近くの窓際で読書する弁護士がいました。カツラとガウンを脱ぎリラックスしており、私が声かけてもまったく気づきませんでした。 

 

 
 やっと法廷にたどり着くと、中には誰もいませんでした。ちょうど昼どきの休廷中だったのです。法廷には弁護士の鞄が一つ寂しく残されていました。裁判所の構造は階段式になっており、左右対称に間近に向かい合う座席はで英国の国会議事堂のミニチュアを思わせます。傍聴席は一階後方と二階です。日本では裁判官だけが壇上に登り見下ろしていますが、英国を含めアイルランドでは傍聴人のほうがより高いところから見張っているのです。法廷内に陪審員用の席があったとは思えないのですが、部屋の奥には陪審員用の合議室がありました。
法廷正面 法廷斜景

昼休みが終わり、法廷が再開し、陽気にポーズをとってくれた弁護士、玄関で悩みこんでいた弁護士と読書にふけっていた弁護士がそれぞれ弁論を始めたことでしょう。いったいどの弁護士が良い成果を納めたのでしょうか???